数学第 11 章約 6 分図 1 点

極限と微分

微分を「グラフの接線の傾き」および「変化率」として導入する。物理では微分は位置→速度→加速度をつなぐ道具なので、公式の暗記よりも「何を何で微分したのか」を読み取れることを重視する。

この章の到達目標

  • 平均変化率の極限として微分係数を定義できる
  • べき関数・三角関数・指数関数の導関数を書ける
  • 積の微分・合成関数の微分(連鎖律)を使える
  • 位置を時間で微分すると速度、もう一度微分すると加速度になることを説明できる
  • 微分が 0 になる点として、最大・最小や折り返し点を求められる
目次
  1. 平均変化率から瞬間の変化率へ
  2. 定義から計算してみる
  3. 導関数の公式
  4. 積の微分と連鎖律
  5. 物理での意味:位置・速度・加速度
  6. 例:等加速度運動
  7. 例:単振動
  8. 微分が 0 になる点
  9. 章末問題

物理基礎では、等加速度運動を「vv-tt グラフの傾きと面積」で扱いました。 あの方法は、グラフが直線でなければ使えません。

微分積分は、この制限を外す道具です。 傾きを求める操作が微分、面積を求める操作が積分で、 グラフが曲線でも同じことができるようになります。

平均変化率から瞬間の変化率へ

関数 f(x)f(x) について、xx が aa から a+ha + h まで変わるときの平均変化率は

f(a+h)−f(a)h\frac{f(a+h) - f(a)}{h}

これはグラフ上の2点を結ぶ直線の傾きです。

hh を小さくしていくと、この直線は点 (a,f(a))(a, f(a)) における接線に近づきます。 その極限を微分係数と呼びます。

f′(a)=lim⁡h→0f(a+h)−f(a)hf'(a) = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h}
微分係数の定義

各点での微分係数を対応させた関数 f′(x)f'(x) を導関数と呼び、 dfdx\dfrac{\dd f}{\dd x} とも書きます。

aa+hyx平均変化率接線(h→0)
図 1平均変化率(2点を結ぶ直線の傾き)は、h → 0 の極限で接線の傾きに近づく。

定義から計算してみる

f(x)=x2f(x) = x^2 の導関数を定義から求めます。

f(x+h)−f(x)h=(x+h)2−x2h=2xh+h2h=2x+h\frac{f(x+h) - f(x)}{h} = \frac{(x+h)^2 - x^2}{h} = \frac{2xh + h^2}{h} = 2x + h

h→0h \to 0 とすれば

f′(x)=2xf'(x) = 2x

導関数の公式

f(x)f(x)f′(x)f'(x)
xnx^nnxn−1nx^{n-1}
定数 cc00
sin⁡x\sin xcos⁡x\cos x
cos⁡x\cos x−sin⁡x-\sin x
exe^xexe^x
log⁡x\log x1/x1/x

積の微分と連鎖律

(fg)′=f′g+fg′(fg)' = f'g + fg'
積の微分
ddxf(g(x))=f′(g(x))⋅g′(x)\frac{\dd}{\dd x}f(g(x)) = f'(g(x))\cdot g'(x)
合成関数の微分(連鎖律)

連鎖律は物理で極めて頻繁に使います。「外側を微分して、内側の微分を掛ける」と覚えます。

ddtsin⁡(ωt)=cos⁡(ωt)⋅ω=ωcos⁡(ωt)\frac{\dd}{\dd t}\sin(\omega t) = \cos(\omega t)\cdot\omega = \omega\cos(\omega t)

物理での意味:位置・速度・加速度

物理における微分の最大の用途はこれです。

v=dxdt,a=dvdt=d2xdt2v = \deriv{x}{t}, \qquad a = \deriv{v}{t} = \frac{\dd^2 x}{\dd t^2}
運動の記述

位置を時間で微分すると速度、速度をもう一度微分すると加速度です。

例:等加速度運動

x=v0t+12at2x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 を時間で微分します。

v=dxdt=v0+atv = \deriv{x}{t} = v_0 + at

もう一度微分すると

dvdt=a\deriv{v}{t} = a

加速度が定数 aa として出てきました。 物理基礎で3つ並べて覚えた公式が、1つの式を微分するだけでつながります。

例:単振動

x=Asin⁡(ωt)x = A\sin(\omega t) を微分します。連鎖律を使って

v=Aωcos⁡(ωt),a=−Aω2sin⁡(ωt)v = A\omega\cos(\omega t), \qquad a = -A\omega^2\sin(\omega t)

ここで x=Asin⁡(ωt)x = A\sin(\omega t) を思い出すと

a=−ω2xa = -\omega^2 x

微分が 0 になる点

f′(x)=0f'(x) = 0 の点では接線が水平になります。そこは関数が増加から減少へ (またはその逆へ)折り返す点で、最大値・最小値の候補です。

物理では次のように使います。

  • 最高点 — 投げ上げた物体が v=dx/dt=0v = \dd x/\dd t = 0 になる時刻
  • 最大の飛距離 — 到達距離を角度で微分して 00 にする
  • つりあいの位置 — 位置エネルギー U(x)U(x) が dU/dx=0\dd U/\dd x = 0 を満たす点

章末問題

問 1基本導関数の計算

次の関数を tt で微分せよ。

(1) x=3t3−5t+2x = 3t^3 - 5t + 2 (2) x=cos⁡(2t)x = \cos(2t) (3) x=t2sin⁡tx = t^2\sin t

解答を見る

(1) 各項に xn→nxn−1x^n \to nx^{n-1} を使い、定数は 00。

dxdt=9t2−5\deriv{x}{t} = 9t^2 - 5

(2) 連鎖律。外側 cos⁡\cos を微分して −sin⁡-\sin、内側 2t2t の微分は 22。

dxdt=−sin⁡(2t)⋅2=−2sin⁡(2t)\deriv{x}{t} = -\sin(2t)\cdot 2 = -2\sin(2t)

(3) 積の微分 (fg)′=f′g+fg′(fg)' = f'g + fg'。f=t2f = t^2、g=sin⁡tg = \sin t。

dxdt=2tsin⁡t+t2cos⁡t\deriv{x}{t} = 2t\sin t + t^2\cos t

問 2標準運動への応用

質点の位置が x(t)=4t3−12t2+9tx(t) = 4t^3 - 12t^2 + 9t(xx は m\mathrm{m}、tt は s\mathrm{s})で与えられている。

(1) 速度 v(t)v(t) と加速度 a(t)a(t) を求めよ。 (2) 質点が一時的に止まる時刻をすべて求めよ。 (3) 運動の向きが変わる回数を答えよ。

解答を見る

(1) 順に微分します。

v=dxdt=12t2−24t+9v = \deriv{x}{t} = 12t^2 - 24t + 9a=dvdt=24t−24a = \deriv{v}{t} = 24t - 24

(2) 止まるのは v=0v = 0 のとき。

12t2−24t+9=0  ⟹  4t2−8t+3=0  ⟹  (2t−1)(2t−3)=012t^2 - 24t + 9 = 0 \;\Longrightarrow\; 4t^2 - 8t + 3 = 0 \;\Longrightarrow\; (2t-1)(2t-3) = 0t=0.50 s,t=1.5 st = 0.50\unit{s},\quad t = 1.5\unit{s}

(3) v=12(t−0.5)(t−1.5)v = 12(t - 0.5)(t - 1.5) と因数分解できるので、符号は

  • t<0.5t < 0.5 … v>0v > 0(正の向き)
  • 0.5<t<1.50.5 < t < 1.5 … v<0v < 0(負の向き)
  • t>1.5t > 1.5 … v>0v > 0(正の向き)

符号が2回変わるので、向きが変わるのは2回。

なお a=0a = 0 となる t=1.0 st = 1.0\unit{s} は、速度が最小(最も負)になる時刻で、 向きが変わる時刻ではありません。v=0v = 0 と a=0a = 0 の意味を混同しないでください。

問 3発展微分による最適化

初速 v0v_0 で、水平から角 θ\theta の向きに物体を投げ出す。 空気抵抗を無視すると水平到達距離は

R(θ)=v02gsin⁡2θR(\theta) = \frac{v_0^2}{g}\sin 2\theta

で与えられる。

(1) RR を最大にする θ\theta を、微分を使って求めよ。 (2) θ=30°\theta = 30° と θ=60°\theta = 60° で RR が等しくなることを示し、その理由を述べよ。

解答を見る

(1) θ\theta で微分します。連鎖律より

dRdθ=v02g⋅2cos⁡2θ\deriv{R}{\theta} = \frac{v_0^2}{g}\cdot 2\cos 2\theta

これが 00 になるのは cos⁡2θ=0\cos 2\theta = 0、すなわち

2θ=90°  ⟹  θ=45°2\theta = 90° \;\Longrightarrow\; \theta = 45°

これが最大であることを確かめます。もう一度微分すると

d2Rdθ2=−4v02gsin⁡2θ\frac{\dd^2 R}{\dd\theta^2} = -\frac{4v_0^2}{g}\sin 2\theta

θ=45°\theta = 45° で sin⁡90°=1>0\sin 90° = 1 > 0 なので第2次導関数は負。よって極大です。

答: θ=45°\theta = 45°。

(2) sin⁡(2×30°)=sin⁡60°\sin(2\times 30°) = \sin 60°、sin⁡(2×60°)=sin⁡120°\sin(2\times 60°) = \sin 120° で、 sin⁡120°=sin⁡(180°−120°)=sin⁡60°\sin 120° = \sin(180° - 120°) = \sin 60° なので両者は等しい。

一般に sin⁡2θ=sin⁡(180°−2θ)\sin 2\theta = \sin(180° - 2\theta) であり、 180°−2θ=2(90°−θ)180° - 2\theta = 2(90° - \theta) なので

R(θ)=R(90°−θ)R(\theta) = R(90° - \theta)

つまり θ\theta と 90°−θ90° - \theta は同じ距離を与えます。 45°45° を挟んで対称なので、30°30° と 60°60°、20°20° と 70°70° が対になります。

物理的には、低い角度は「速いが滞空時間が短い」、高い角度は 「遅いが滞空時間が長い」で、両者の積がちょうど釣り合っています。

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