極限と微分
微分を「グラフの接線の傾き」および「変化率」として導入する。物理では微分は位置→速度→加速度をつなぐ道具なので、公式の暗記よりも「何を何で微分したのか」を読み取れることを重視する。
この章の到達目標
- 平均変化率の極限として微分係数を定義できる
- べき関数・三角関数・指数関数の導関数を書ける
- 積の微分・合成関数の微分(連鎖律)を使える
- 位置を時間で微分すると速度、もう一度微分すると加速度になることを説明できる
- 微分が 0 になる点として、最大・最小や折り返し点を求められる
物理基礎では、等加速度運動を「- グラフの傾きと面積」で扱いました。 あの方法は、グラフが直線でなければ使えません。
微分積分は、この制限を外す道具です。 傾きを求める操作が微分、面積を求める操作が積分で、 グラフが曲線でも同じことができるようになります。
平均変化率から瞬間の変化率へ
関数 について、 が から まで変わるときの平均変化率は
これはグラフ上の2点を結ぶ直線の傾きです。
を小さくしていくと、この直線は点 における接線に近づきます。 その極限を微分係数と呼びます。
各点での微分係数を対応させた関数 を導関数と呼び、 とも書きます。
定義から計算してみる
の導関数を定義から求めます。
とすれば
導関数の公式
| 定数 | |
積の微分と連鎖律
連鎖律は物理で極めて頻繁に使います。「外側を微分して、内側の微分を掛ける」と覚えます。
物理での意味:位置・速度・加速度
物理における微分の最大の用途はこれです。
位置を時間で微分すると速度、速度をもう一度微分すると加速度です。
例:等加速度運動
を時間で微分します。
もう一度微分すると
加速度が定数 として出てきました。 物理基礎で3つ並べて覚えた公式が、1つの式を微分するだけでつながります。
例:単振動
を微分します。連鎖律を使って
ここで を思い出すと
微分が 0 になる点
の点では接線が水平になります。そこは関数が増加から減少へ (またはその逆へ)折り返す点で、最大値・最小値の候補です。
物理では次のように使います。
- 最高点 — 投げ上げた物体が になる時刻
- 最大の飛距離 — 到達距離を角度で微分して にする
- つりあいの位置 — 位置エネルギー が を満たす点
章末問題
問 1基本導関数の計算
次の関数を で微分せよ。
(1) (2) (3)
解答を見る
(1) 各項に を使い、定数は 。
(2) 連鎖律。外側 を微分して 、内側 の微分は 。
(3) 積の微分 。、。
問 2標準運動への応用
質点の位置が ( は 、 は )で与えられている。
(1) 速度 と加速度 を求めよ。 (2) 質点が一時的に止まる時刻をすべて求めよ。 (3) 運動の向きが変わる回数を答えよ。
解答を見る
(1) 順に微分します。
(2) 止まるのは のとき。
(3) と因数分解できるので、符号は
- … (正の向き)
- … (負の向き)
- … (正の向き)
符号が2回変わるので、向きが変わるのは2回。
なお となる は、速度が最小(最も負)になる時刻で、 向きが変わる時刻ではありません。 と の意味を混同しないでください。
問 3発展微分による最適化
初速 で、水平から角 の向きに物体を投げ出す。 空気抵抗を無視すると水平到達距離は
で与えられる。
(1) を最大にする を、微分を使って求めよ。 (2) と で が等しくなることを示し、その理由を述べよ。
解答を見る
(1) で微分します。連鎖律より
これが になるのは 、すなわち
これが最大であることを確かめます。もう一度微分すると
で なので第2次導関数は負。よって極大です。
答: 。
(2) 、 で、 なので両者は等しい。
一般に であり、 なので
つまり と は同じ距離を与えます。 を挟んで対称なので、 と 、 と が対になります。
物理的には、低い角度は「速いが滞空時間が短い」、高い角度は 「遅いが滞空時間が長い」で、両者の積がちょうど釣り合っています。