物理基礎第 1 章約 6 分図 1 点

運動の記述

物体の運動を「位置・変位・速度・加速度」という4つの量で言い表す方法を身につけ、等加速度直線運動の3公式を v-t グラフから導けるようにする。

この章の到達目標

  • 変位と道のり、速度と速さの違いを、符号を使って説明できる
  • 平均の速度と瞬間の速度の関係を、v-t グラフ上で指させる
  • 等加速度直線運動の3公式を、暗記ではなく v-t グラフの面積と傾きから導ける
  • グラフの傾き・面積がそれぞれ何を表すかを、単位から確かめられる

前提単位と次元・有効数字

目次
  1. 位置と変位
  2. 速度と速さ
  3. 平均の速度
  4. 瞬間の速度
  5. 加速度
  6. 等加速度直線運動
  7. v-t グラフから3公式を導く
  8. 章末問題

物理の最初の仕事は、目に見える運動を数値で言い表せる形に翻訳することです。 「速かった」「だんだん遅くなった」という言い方では、二人の観測を突き合わせられません。 この章では、運動を記述するための4つの量を順に導入します。

位置と変位

直線上の運動を考えるとき、まず基準点(原点)と正の向きを決めます。 これを決めない限り「右に 3 m」は意味を持ちません。

物体の位置 xx は、原点からの符号つきの距離です。 時刻 t1t_1 に x1x_1、時刻 t2t_2 に x2x_2 にいたとき、その間の変位は

Δx=x2−x1\Delta x = x_2 - x_1
変位の定義

で定義されます。Δ\Delta(デルタ)は「変化量」を表す記号で、必ず (後)−(前) の順で引きます。

速度と速さ

平均の速度

変位を、それにかかった時間で割った量が平均の速度です。

vˉ=ΔxΔt=x2−x1t2−t1\bar{v} = \frac{\Delta x}{\Delta t} = \frac{x_2 - x_1}{t_2 - t_1}
平均の速度

変位が符号つきなので、速度も符号つきです。負の速度は「負の向きに動いている」ことを表します。 これに対し速さは速度の絶対値 ∣v∣|v| で、向きの情報を捨てた量です。

瞬間の速度

平均の速度は、区間の取り方によって値が変わります。 Δt\Delta t をどんどん短くしていったときに近づく値を、その時刻の瞬間の速度と呼びます。

xx-tt グラフで言えば、平均の速度は2点を結ぶ直線の傾き、 瞬間の速度はその点における接線の傾きです。 以降、単に「速度」と言えば瞬間の速度を指します。

加速度

速度が時間とともに変わるとき、その変化の速さを加速度と呼びます。

aˉ=ΔvΔt=v2−v1t2−t1\bar{a} = \frac{\Delta v}{\Delta t} = \frac{v_2 - v_1}{t_2 - t_1}
平均の加速度

単位は (m/s)/s=m/s2\mathrm{(m/s)/s} = \mathrm{m/s^2} です。

ここで符号の扱いに注意が必要です。 加速度が負であることと、減速していることは同じではありません。

等加速度直線運動

加速度が一定の直線運動を等加速度直線運動といいます。 自由落下や斜面を滑る物体がこれにあたり、高校物理で最も頻繁に登場する運動です。

時刻 t=0t = 0 での速度を v0v_0(初速度)、位置を x=0x = 0 とし、加速度を aa とします。

v-t グラフから3公式を導く

等加速度直線運動の vv-tt グラフは直線になります。

v₀vttv面積 = x傾き = a
図 1等加速度直線運動の v-t グラフ。傾きが加速度 a、色をつけた台形の面積が変位 x にあたる。

傾きが加速度なので、時刻 tt での速度は初速度 v0v_0 に atat を足したものです。

v=v0+atv = v_0 + at
等加速度直線運動の公式①

面積が変位です。図の台形は「上底 v0v_0、下底 vv、高さ tt」なので、

x=12(v0+v) tx = \frac{1}{2}(v_0 + v)\,t

これに公式①を代入して vv を消すと、

x=v0t+12at2x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2
等加速度直線運動の公式②

さらに、公式①を t=(v−v0)/at = (v - v_0)/a と解いて台形の式に代入すると、tt を含まない関係が得られます。

v2−v02=2axv^2 - v_0^2 = 2ax
等加速度直線運動の公式③

章末問題

問 1基本変位と道のり

数直線上を動く物体が、原点を出発して x=+8.0 mx = +8.0\unit{m} まで進み、 そこから引き返して x=−2.0 mx = -2.0\unit{m} で止まった。 この間の変位と道のりをそれぞれ求めよ。

解答を見る

変位は始点と終点だけで決まるので

Δx=(−2.0)−0=−2.0 m\Delta x = (-2.0) - 0 = -2.0\unit{m}

道のりは実際に動いた長さの合計で

8.0+10.0=18 m8.0 + 10.0 = 18\unit{m}

変位 −2.0 m-2.0\unit{m}、道のり 18 m18\unit{m}。 引き返す運動では、変位の大きさと道のりは一致しません。

問 2標準等加速度直線運動

初速度 10 m/s10\unit{m/s} で正の向きに走っていた自動車が、 一定の加速度 −2.0 m/s2-2.0\unit{m/s^2} で減速し始めた。

(1) 停止するまでにかかる時間を求めよ。 (2) 停止するまでに進む距離を求めよ。

解答を見る

(1) 停止とは v=0v = 0 になること。公式① v=v0+atv = v_0 + at より

0=10+(−2.0) t⟹t=5.0 s0 = 10 + (-2.0)\,t \quad\Longrightarrow\quad t = 5.0\unit{s}

(2) 時間が (1) で求まっているので公式②でもよいのですが、 ここでは時間を使わない公式③を使ってみます。

v2−v02=2ax  ⟹  0−102=2×(−2.0)×xv^2 - v_0^2 = 2ax \;\Longrightarrow\; 0 - 10^2 = 2 \times (-2.0) \times xx=−100−4.0=25 mx = \frac{-100}{-4.0} = 25\unit{m}

答: (1) 5.0 s5.0\unit{s}、(2) 25 m25\unit{m}。

なお (2) は「vv-tt グラフの三角形の面積」と見ても 12×5.0×10=25 m\frac{1}{2} \times 5.0 \times 10 = 25\unit{m} とすぐ出ます。

問 3発展符号の扱い

小球を地面から真上に初速度 19.6 m/s19.6\unit{m/s} で投げ上げた。 鉛直上向きを正とし、重力加速度の大きさを 9.8 m/s29.8\unit{m/s^2} とする。

(1) 最高点に達する時刻と、そのときの高さを求めよ。 (2) 投げ上げてから 3.0 s3.0\unit{s} 後の速度と位置を求め、 そのとき小球が上昇中か下降中かを答えよ。

解答を見る

上向きを正としたので、加速度は a=−9.8 m/s2a = -9.8\unit{m/s^2}(下向き)で運動の間ずっと一定です。

(1) 最高点では速度が 00 になります。公式①より

0=19.6+(−9.8)t⟹t=2.0 s0 = 19.6 + (-9.8)t \quad\Longrightarrow\quad t = 2.0\unit{s}

高さは公式③が速い。

0−19.62=2×(−9.8)×x  ⟹  x=−384.16−19.6=19.6 m0 - 19.6^2 = 2 \times (-9.8) \times x \;\Longrightarrow\; x = \frac{-384.16}{-19.6} = 19.6\unit{m}

(2) 公式①より

v=19.6+(−9.8)(3.0)=−9.8 m/sv = 19.6 + (-9.8)(3.0) = -9.8\unit{m/s}

公式②より

x=19.6×3.0+12(−9.8)(3.0)2=58.8−44.1=14.7 mx = 19.6 \times 3.0 + \frac{1}{2}(-9.8)(3.0)^2 = 58.8 - 44.1 = 14.7\unit{m}

速度が負なので下降中。位置は正なのでまだ地面より上(高さ 14.7 m14.7\unit{m})にいます。

答: (1) 2.0 s2.0\unit{s}、19.6 m19.6\unit{m} (2) 速度 −9.8 m/s-9.8\unit{m/s}、位置 14.7 m14.7\unit{m}、下降中。

この問題の要点は、上昇・下降・最高点を場合分けせず、1つの式で通せることです。 上向きを正と決めたら、加速度は最初から最後まで −9.8 m/s2-9.8\unit{m/s^2}。 「上昇中は…、下降中は…」と分けて考える必要はありません。

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