平面内の運動と放物運動
直線上の運動で扱った速度・加速度をベクトルに拡張し、水平方向と鉛直方向を独立に扱うことで、水平投射・斜方投射をひとつの方針で解けるようにする。
この章の到達目標
- 速度・加速度をベクトルとして成分に分解できる
- 相対速度を「観測者の速度を引く」操作として計算できる
- 放物運動を、水平方向の等速直線運動と鉛直方向の等加速度直線運動に分けて立式できる
- 斜方投射の最高点・水平到達距離を、公式暗記に頼らず導ける
物理基礎では直線上の運動だけを扱いました。 この章では平面へ広げますが、新しい法則は何も出てきません。 やることはただひとつ、運動を2方向に分解して、それぞれに既知の公式を当てることです。
速度と加速度のベクトル
平面上の運動では、位置は位置ベクトル で表します。 速度・加速度も同様に成分で書けます。
重要なのは、 成分と 成分がたがいに影響しないことです。 方向の運動は 成分の式だけで完結し、 方向も同様です。 これを運動の独立性といいます。
相対速度
観測者 A から見た物体 B の速度を相対速度といい、次で与えられます。
「見られる側から見る側を引く」と覚えます。順序を逆にすると符号が反転します。
水平投射
高さ の位置から、水平方向に初速度 で物体を投げ出します。 水平右向きを の正、鉛直下向きを の正にとりましょう。
働く力は重力だけなので、加速度は 、 です。
| 方向 | 方向 | |
|---|---|---|
| 加速度 | ||
| 初速度 | ||
| 運動の種類 | 等速直線運動 | 自由落下 |
したがって、時刻 での速度と位置は
を消去すると軌道の式が得られます。 を の式に代入して
が に比例する——つまり軌道は放物線です。
斜方投射
水平から角 の向きに、初速度 で投げ上げます。 今度は鉛直上向きを の正にとります(加速度が になります)。
初速度を成分に分けると
あとは水平投射と同じで、方向ごとに公式を当てるだけです。
最高点と水平到達距離
最高点では です。
このときの高さは
水平到達距離は、 に戻る時刻が対称性より であることから
を使って
章末問題
問 1基本水平投射
高さ のがけの上から、水平方向に で小球を投げ出した。 重力加速度を 、空気抵抗は無視する。
(1) 地面に達するまでの時間を求めよ。 (2) がけのふもとから着地点までの水平距離を求めよ。
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鉛直下向きを正にとります。
(1) 鉛直方向は初速度 の自由落下なので
水平方向の初速度 は、この計算に一切関係しません。
(2) 水平方向は等速直線運動なので
答: (1) 、(2) 。
問 2標準斜方投射
地面から、水平と をなす向きに初速度 でボールを打ち出した。 重力加速度を とする。
(1) 最高点の高さを求めよ。 (2) 水平到達距離を求めよ。
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初速度の成分は
(1) 鉛直方向のみで考えます。最高点で なので、公式③より
(2) 最高点までの時間は 、 滞空時間はその2倍で 。よって
公式 で確かめると で一致します。
答: (1) 、(2) 約 。
問 3発展相対速度
静水時の速さが の船で、 流れの速さ の川(幅 )を渡る。
(1) 船首を対岸に向けてまっすぐ進んだとき、対岸に着くまでの時間と、 流されるきょりを求めよ。 (2) 流されずに真正面の対岸へ着くには、船首を上流側へ何度傾ければよいか。 またそのとき渡るのにかかる時間を求めよ。
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川を横切る向きを 、流れの向きを とします。
(1) 船首を対岸に向けたので、船の 方向の速度は のまま。 流れは 方向の運動に影響しません(運動の独立性)。
その間ずっと で流されるので
(2) 流されないためには、船の速度の 成分が流れをちょうど打ち消せばよい。 船首を上流へ角 傾けると
このとき対岸へ向かう速度成分は
答: (1) 、 (2) 上流へ約 、約 。
(1) より (2) のほうが時間がかかります。 速度の一部を流れの打ち消しに使うため、対岸へ向かう成分が減るからです。