AIを英語の練習相手と添削者にする
AI アシスタントを、会話の練習相手・添削者・読解教材の作り手として使うための設定プロンプトを用意する。コピーしてそのまま使える型と、1週間の練習メニュー、添削を鵜呑みにしないための注意をまとめる。
この章の到達目標
- 場面・レベル・返答の長さを指定して、AI とロールプレイの会話練習ができる
- 大きな誤りだけを、元の文と直した文を並べて示させる添削の設定を書ける
- 自分のレベルに合った読解素材と確認問題を AI に作らせられる
- AI の添削を鵜呑みにせず、理由を尋ねて確かめられる
- 自分の間違いを記録し、1週間単位の練習を回せる
英語を話せるようになるには、実際に話す回数が必要です。 しかし、練習相手を毎日見つけるのは簡単ではありません。
AI アシスタントは、この不足を埋める道具になります。 いつでも相手をしてくれて、同じ場面を何度でも繰り返せて、間違えても気まずくなりません。
この章では、AI を会話の練習相手、添削者、読解教材の作り手として使うための 設定プロンプトを用意します。どれも前の章の「指示の5つの部品」で組み立ててあるので、 自分の目的に合わせて部品を入れ替えられます。
AI を練習相手にする利点と限界
最初に、何ができて何ができないかを整理しておきます。
| 利点 | 限界 |
|---|---|
| 時間や場所を選ばず、何度でも練習できる | 添削や表現が不自然なこと、直さなくてよいものを直すことがある |
| 場面・レベル・話す速さを自由に指定できる | 指示しないと、返答が長く、先生のように話しすぎる |
| 間違えても恥ずかしくない | 相手に合わせすぎる傾向があり、本物の会話の緊張感はない |
| その場で説明や言い換えを求められる | 発音を正確に評価できるとは限らない |
限界の多くは、設定プロンプトで最初に指示しておくことで小さくできます。 以下の設定は、どれもこの限界を踏まえて書いてあります。
設定1:ロールプレイで会話練習
場面を決めて、AI に相手役を演じてもらいます。
Let's do a role-play so I can practice English conversation.
Scenario: I'm checking in at a hotel in New York. You are the front desk clerk.
My level: CEFR A2. Please use simple words and short sentences.
Rules:
- Keep each reply to one or two sentences.
- Ask only one question at a time, then wait for my answer.
- Don't correct my mistakes during the conversation. Just keep the conversation going.
- If I write something in Japanese, show me how to say it in English, then continue.
- When I type "feedback", stop the role-play and list my three most important mistakes with corrections.
Please start the conversation.
各行には理由があります。
- 場面(Scenario)と役割: 何の会話か決まっていないと、AI は一般的な雑談を始めます。 場面を決めると、その場で実際に使う表現が出てきます
- レベル(My level): CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)は、語学力を A1〜C2 の6段階で表す国際的な目安です。
学校英語を学んだが使えない、という段階なら、A2(日常の簡単なやりとり)〜B1(身近な話題なら対応できる)から
始めるのが目安です。難しすぎれば
Make it easier.、簡単すぎればMake it a little harder.と伝えます - 返答は1〜2文: これを書かないと、AI は長い返答を返しがちです。 会話の練習で大事なのは自分が話す回数なので、相手の番は短くしてもらいます
- 質問は1つずつ: 質問が一度に3つ来ると、答えるだけで精一杯になります
- 会話中は直さない: 1文ごとに添削が入ると、会話の流れが途切れます。添削は
feedbackと打ったときにまとめて受けます - 日本語を書いたら英語を示す: 詰まったときの逃げ道です。黙って止まるより、日本語で書いてしまうほうが練習が続きます
場面を変えれば、同じ設定で別の練習ができます。
Scenario: I'm ordering food at a restaurant. You are the server.
Scenario: I'm talking with a new coworker during a lunch break. You are the coworker.
Scenario: I'm in a job interview. You are the interviewer. Ask me about my work experience.
Scenario: I'm explaining my job to a person I just met at a party. You are that person.
同じ場面を2〜3回繰り返すと、1回目に言えなかった表現が2回目には出てくるようになります。 新しい場面を次々に試すより、同じ場面を繰り返すほうが、表現が定着します。
設定2:添削モード
自分が書いた英文を直してもらう設定です。
From now on, please act as my English writing tutor.
When I send you an English sentence, do the following:
1. Correct only major errors: grammar mistakes, wrong word choices, or anything that makes the meaning unclear.
2. Ignore minor style differences. If my sentence is already correct and natural, just say "OK" and do not rewrite it.
3. Do not add new content or change what I wanted to say.
4. Show the result in this format:
Original: [my sentence]
Corrected: [the corrected sentence]
Why: [a brief explanation in Japanese, one or two lines]
もっと自然な言い方も知りたいときは、添削のあとに追加で聞きます。
Is there a more natural way to say this in a casual conversation?
添削と「より自然な言い方」を分けて聞くことで、誤りの修正と表現の幅を広げることを混同せずに済みます。
設定3:読解練習
自分のレベルと興味に合わせた読解素材を作ってもらい、理解を確かめる問題も出してもらいます。
I want to practice reading in English.
Write a short article (about 200 words) at CEFR B1 level on this topic: [topic].
Then ask me three comprehension questions, one at a time.
Wait for my answer before asking the next question.
Do not show the answers until I have answered.
After the last question, list five useful words or phrases from the article with their Japanese meanings.
[topic] には、自分が興味を持てる話題を入れます(working from home、Japanese food culture、how to sleep better など)。
興味のある話題のほうが、最後まで読む動機が続きます。
素材ができたら、関連章「語順のまま読む」の手順(スラッシュを入れる → チャンクで音読する → メモなしで読み直す)を この素材で行うと、読解と語順の練習を同時にできます。
設定4:音声で話す練習
アプリによっては、音声で入力したり、音声で会話したりできる機能があります。 使える機能や動き方はアプリや利用環境によって異なるので、自分の使っているアプリで確かめてください。
音声で話すときも、最初に設定を伝えておくと練習しやすくなります。
We are going to practice speaking.
Please speak slowly and use simple words.
Keep each reply short, one or two sentences, so that I can speak more.
If my answer is incomplete, ask me a simple follow-up question instead of finishing my sentence for me.
1週間の練習メニュー
1日15〜20分を想定したメニューの例です。 平日は設定1〜4を順に回し、週末に振り返ります。
| 曜日 | 内容 | 使う設定 |
|---|---|---|
| 月 | 読解素材を1つ作ってもらい、確認問題に答える。そのあと素材をチャンクで音読する | 設定3 |
| 火 | 場面を1つ決めてロールプレイ。最後に feedback で誤りを3つ受け取る | 設定1 |
| 水 | 今日の出来事を英語で5文書き、添削してもらう | 設定2 |
| 木 | 火曜と同じ場面でもう一度ロールプレイ。できれば音声で | 設定1・4 |
| 金 | 質問を1つ決め、PREP の型で答えを書いて添削してもらう | 設定2 |
| 土 | 月曜の素材を、メモなしでもう一度読む。新しい素材を1つ読む | 設定3 |
| 日 | 間違いノートを見直し、よく出る誤りを3つ選んで、それを練習する問題を作ってもらう | 下の例 |
金曜の PREP は、関連章「話すための型:結論・理由・例」で扱った型です。 話す前に書いて直してもらうと、自分がよく使う型の誤りに気づけます。
日曜の練習には、次のような指示を使います。
Here are three mistakes I often make in English:
1. [mistake 1]
2. [mistake 2]
3. [mistake 3]
Create five short exercises that help me practice avoiding these mistakes.
Give me the exercises one at a time, and check my answers.
間違いノートをつける
添削で直された誤りのうち、同じ種類の誤りが何度も出てくるものが、優先して直すべき弱点です。 それを見つけるために、直された誤りを記録します。
日付: 9/25
自分の文: I have been to Kyoto last year.
直した文: I went to Kyoto last year.
理由: last year のように過去の時点をはっきり示す語があるときは、現在完了ではなく過去形を使う
種類: 時制
「種類」の欄を付けておくのがポイントです。 2週間ほど記録すると、冠詞(a / the)、3人称単数の -s、時制、前置詞など、 自分がくり返し間違える種類が見えてきます。
誤りを1つずつ覚えるのではなく、種類ごとに「なぜそうなるのか」を理解すれば、 同じ種類の別の誤りも防げるようになります。
章末問題
問 1基本ロールプレイの設定
ある人が AI に Let's talk in English. とだけ入力したところ、
AI は長い段落で返答し、一度に3つの質問をしてきた。
会話の練習をしやすくするために、この指示に何を足せばよいか。足すべき内容を挙げ、改善した指示を英語で書け。
解答を見る
足すべき内容:
- 場面と役割: 何の会話か、AI が何役か
- 自分のレベル: 使う単語や文の難しさを合わせてもらうため
- 返答の長さ: 1〜2文に限る(自分が話す回数を増やすため)
- 質問の数: 1回に1つだけ
改善した指示の例:
Let's do a role-play so I can practice English conversation.
Scenario: We are coworkers talking during a lunch break. You start the conversation.
My level: CEFR A2. Please use simple words.
Keep each reply to one or two sentences.
Ask only one question at a time, and wait for my answer.解説:
AI は、指示がなければ「丁寧で情報の多い答え」を返そうとします。 それは質問への回答としては親切ですが、会話の練習では、相手ばかり話して自分の番が来ない状態になります。 返答の長さと質問の数を指定することで、会話のやりとりの回数を増やせます。
問 2標準添削を検証する
添削モード(設定2)で、AI が次の2つの添削を返した。
(a)
Original: I have been to Kyoto last year.
Corrected: I went to Kyoto last year.
(b)
Original: I'm looking forward to seeing you.
Corrected: I look forward to seeing you.(1) (a) と (b) は、それぞれ「誤りの修正」か「好みの違いによる書き換え」か。理由とともに答えよ。 (2) (b) のような添削を受けたとき、AI にどう尋ねればよいか。英語で書け。
解答を見る
(1)
(a) は誤りの修正。 last year(去年)のように、過去の特定の時点を表す語は、
現在完了(have been)とは一緒に使えません。現在完了は「過去から今につながること」を表す形なので、
「去年」という今と切り離された時点とは合わないからです。過去形 went にするのが正しい修正です。
(b) は好みの違いによる書き換え。 元の I'm looking forward to seeing you. は正しく、
日常的にもよく使われる自然な文です。I look forward to seeing you. はやや改まった響きになり、
ビジネスメールの結びなどで好まれますが、元の文が誤りだったわけではありません。
設定2では「正しければ OK とだけ言う」と指示しているので、(b) は本来 OK と返すべき場面でした。
AI が指示どおりに動かないこともある、という例です。
(2) 尋ね方の例:
Is my original sentence actually wrong, or is your version just more formal?このように「誤りなのか、言い方の違いなのか」を直接聞くと、AI は多くの場合、 元の文も正しいことと、2つの文の響きの違いを説明してくれます。 ただし、その説明も誤っている可能性はあるので、気になる場合は辞書や用例で確かめます。
間違いノートに記録するのは (a) だけです。(b) は誤りではないので、記録すると弱点の傾向がぼやけます。
問 3発展練習計画を設計する
次の条件で、1週間の練習メニューを設計せよ。各日に使う設定と、そのとき AI に送る指示(英語)の要点も書くこと。
- 練習に使える時間は1日15分
- 1か月後に、社内の英語の会議で、1分程度の自己紹介と自分の仕事の説明をする必要がある
解答を見る
解答例:
| 曜日 | 内容 | 使う設定・指示の要点 |
|---|---|---|
| 月 | 自己紹介と仕事の説明を、PREP の型で英語で5〜6文書く | 設定2で添削。Correct only major errors. |
| 火 | 月曜の文を声に出して読み、覚えずに言えるところまで練習する | AI は使わない(音読のみ) |
| 水 | 会議の場面でロールプレイ。相手に仕事について質問してもらう | 設定1。Scenario: I'm introducing myself at a team meeting. You are a coworker. Ask me one question about my work at a time. |
| 木 | 水曜と同じ場面でもう一度。できれば音声で | 設定1・4。Keep each reply to one or two sentences. |
| 金 | 水・木の feedback で出た誤りを直し、説明文を書き直して添削してもらう | 設定2。Is my original sentence actually wrong, or is your version just more natural? |
| 土 | 仕事の説明で使う専門用語を、言い換えの型で説明する練習 | Ask me to explain three words related to my job, one at a time, in simple English. |
| 日 | 間違いノートを見直し、1分の説明を録音して聞き返す | 必要に応じて、よく出る誤りの練習問題を作ってもらう |
確認するポイント:
- 目的から逆算しているか。 最終目標は「1分の自己紹介と仕事の説明」なので、 読解より、書く → 直す → 声に出す → 質問に答える、の流れが中心になる
- 同じ内容を繰り返しているか。 毎日違うことをするより、同じ説明文を1週間かけて磨くほうが、 本番で使える形になる
- 会議で聞かれそうな質問への備えがあるか。 説明を言うだけでなく、ロールプレイで質問に答える練習が入っている
- 添削を鵜呑みにしない手順があるか。 金曜のように、納得できない添削に理由を尋ねる機会を入れている
- 15分に収まるか。 1日に複数の設定を詰め込まず、1つに絞っている
2週目以降は、同じ流れで質問の難しさを上げる(Make your questions a little harder.)、
会議の相手を増やす(Now play two coworkers.)などの変化をつけると、
1か月後の本番に近づけていけます。