AI英語第 1 章約 12 分図 4 点

英語でAIに指示を出す型

チャット型の AI アシスタントに、英語で指示を出すための型を身につける。役割と状況・作業の動詞・制約・出力形式・例の5つの部品で組み立て、追加の指示で結果を詰めていく。

この章の到達目標

  • 英語で指示を出す利点を、誇張せずに説明できる
  • 状況・作業・制約・出力形式・例の5つの部品で、英語の指示を組み立てられる
  • 作業に合った動詞(Summarize、Extract、Rewrite など)を選び分けられる
  • あいまいな指示を、具体的な指示に書き直せる
  • AI の出力を検証する方法と、入力してはいけない情報を説明できる
目次
  1. なぜ英語で指示を出すのか
  2. 指示の型:5つの部品
  3. なぜこの5つなのか
  4. 作業を決める動詞
  5. 制約の書き方
  6. 出力形式の指定
  7. 例を見せる
  8. あいまいな指示を具体的にする
  9. 例1:記事の要約
  10. 例2:メールの下書き
  11. 一度で決めない:追加の指示で詰める
  12. 章末問題

Claude や ChatGPT のようなチャット型の AI アシスタントは、日本語でも英語でも指示を受けつけます。 この章では、英語で指示を出すための型を組み立てます。

AI への指示は、英語を使う練習として非常に向いています。 相手は待ってくれて、何度でもやり直せて、しかも結果がすぐに返ってくるからです。 ここで身につける命令文の型は、そのまま仕事のメールや依頼の英語にも使えます。

なぜ英語で指示を出すのか

最初に、正確なところを確認しておきます。

英語で指示を出す利点は、主に次の4つです。

  1. 英語の練習になる。 毎日の作業がそのまま英作文の練習になる。 しかも AI への指示は「目的のはっきりした短い命令文」なので、練習の素材として扱いやすい
  2. 作業を表す動詞が細かく分かれている。 日本語の「まとめて」は、要約・整理・一覧化のどれとも取れる。 英語では Summarize(要約する)、Organize(整理する)、List(列挙する)と、動詞の段階で作業が決まる
  3. 英語の資料やツールと一緒に使いやすい。 英語の記事・文書・エラーメッセージを扱うとき、 指示も英語にすれば、入力と指示と出力が同じ言語でそろう。英語で出力がほしい場合も同様
  4. 他の人と共有しやすい。 英語で書いた指示は、海外の同僚とも共有でき、 インターネット上で公開されている指示の例も英語のものが多い

英語で指示を出し、答えだけ日本語でもらう、という使い方もできます。 指示の最後に Answer in Japanese. と一文足すだけです。

指示の型:5つの部品

AI への指示は、次の5つの部品で組み立てます。

部品役割英語の例
1. 役割・状況(Role / Context)AI が知らない前提を伝えるI'm a sales manager preparing for a meeting.
2. 作業(Task)何をしてほしいかを動詞で言うSummarize the report below.
3. 制約(Constraints)範囲・長さ・禁止事項を絞るKeep it under 100 words.
4. 出力形式(Output format)結果の形を決めるUse bullet points.
5. 例(Examples)ほしい結果の見本を示すHere is an example of the style I want:

すべてをそろえたものが、次のテンプレートです。

[1. Role / Context]
I'm a [your role]. I'm working on [situation].

[2. Task]
[Verb] the [material] below.

[3. Constraints]
- Keep it under [number] words.
- Do not [something to avoid].
- Only use information from the text below.

[4. Output format]
Format the answer as [a table / bullet points / a short paragraph].

[5. Examples]
Here is an example of what I want:
[example]

Text:
"""
[paste the material here]
"""

なぜこの5つなのか

それぞれの部品は、「AI が知らないこと」を1つずつ埋めています。

  • 役割・状況: AI はあなたの立場も目的も知りません。「誰が何のために使うか」が分かると、 専門用語の量や説明の深さを合わせられます
  • 作業: 何をするかが決まらなければ、AI は一般的な答えを返すしかありません。 最も重要な部品で、これだけは省けません
  • 制約: 長さ・範囲・禁止事項を決めないと、AI は「無難に長め」の答えを返しがちです
  • 出力形式: 形が決まっていると、結果をそのまま表計算ソフトや資料に移せます
  • 例: 文体や粒度は、言葉で説明するより見本を1つ見せるほうが確実に伝わります
1つの指示AI が知らないこと1 役割・状況(Role / Context)前提:誰が・何のために2 作業(Task)何をするか(省けない)3 制約(Constraints)長さ・範囲・禁止事項4 出力形式(Output format)結果の形5 例(Examples)文体・粒度の見本I’m a sales manager preparing for a meeting.Summarize the report below.Keep it under 100 words.Use bullet points.Here is an example of the style I want: …材料(貼り付ける本文)手元の本文そのものReport: """ [paste the report here] """
図 1表の英語の例を、1つの指示として上から積み上げた図。色の帯が5つの部品で、右側はそれぞれが埋めている「AI が知らないこと」。材料の本文は引用符で区切って最後に置く。

すべての指示に5つをそろえる必要はありません。 短い作業なら「作業」と「制約」だけで十分です。結果が期待とずれたとき、足りない部品を足す、 と考えてください。

語順にも注目してください。どの部品も「動詞(何をする)→ 詳細」の順になっています。 これは「英語は骨組みが先、詳細があと」という、関連章で見た語順の原則そのものです。

作業を決める動詞

作業の部品は、命令形の動詞から始めます。動詞の選び方で、返ってくる結果が変わります。

動詞作業例
Summarize要約するSummarize this article in three sentences.
Compare比べるCompare these two plans in terms of cost and risk.
Extract抜き出すExtract all dates and deadlines from this email.
Rewrite書き直すRewrite this paragraph in simpler English.
List列挙するList five common mistakes beginners make.
Explain説明するExplain this concept as if I were a high school student.
Draft下書きを作るDraft a short reply declining the invitation politely.
Translate翻訳するTranslate this into natural Japanese.
Classify分類するClassify these comments as positive, negative, or neutral.
Review点検するReview my email and point out anything unclear.
Suggest案を出すSuggest three titles for this presentation.
Summarize要約する全体を短く圧縮するCompare比べるAB観点ごとに並べて比べるExtract抜き出す9/3010/5指定した情報を元の形のままRewrite書き直す中身は同じ、調子を変えるList列挙する?12345項目を番号つきで並べるClassify分類する+−0決めた分類に振り分ける
図 2よく使う動詞6つを、入力(左)と出力(右)の形で描き分けた図。同じ「短くする」でも、Summarize は全体を圧縮し、Extract は指定した部分だけを元の形のまま取り出す。

制約の書き方

制約は、結果を絞り込むための条件です。次の型を組み合わせて使います。

In under 100 words.                        100語未満で
In three sentences or fewer.               3文以内で
Do not use technical terms.                専門用語を使わないで
Only use information from the text below.  下の文章の情報だけを使って
Assume the reader is new to this topic.    読み手はこの分野の初心者だと想定して
Use a friendly but professional tone.      親しみやすく、かつ丁寧な調子で
If you are unsure, say so instead of guessing.  自信がなければ、推測せずにそう言って
Answer in Japanese.                        日本語で答えて

出力形式の指定

形式を指定すると、結果を読みやすく、再利用しやすくできます。

Format it as a table with columns: Name, Date, Action item.
Use bullet points.
Give me a numbered list.
Return the result in JSON with the keys "name", "date", and "amount".
Start with a one-sentence summary, then give the details.
Use headings for each section.

表の列名を先に決めておくと、毎回同じ形で結果が返ってくるので、比較や集計が楽になります。

例を見せる

文体や粒度など、言葉で説明しにくいことは見本を1つ見せるのが確実です。

Rewrite each product description in the same style as this example.

Example:
Before: This bag is made of durable material and has many pockets.
After: Tough fabric. Lots of pockets. Ready for anything.

Now rewrite these:
1. This bottle keeps drinks cold for a long time.
2. This jacket is light and easy to carry.

見本が1つあるだけで、「短く、体言止めのような調子で」といった説明を書かずに済みます。

あいまいな指示を具体的にする

型を使うと、同じ依頼がどう変わるかを見てみます。

例1:記事の要約

あいまいな指示:

Tell me about this article.

これでは、要約してほしいのか、感想がほしいのか、背景を知りたいのか分かりません。

具体的な指示:

I'm preparing a five-minute briefing for my team, who are not experts in this field.
Summarize the article below in five bullet points.
Each bullet point should be one sentence.
Only use information from the article. Do not add your own opinions.
At the end, list any technical terms that I should explain to my team.

Article:
"""
[paste the article here]
"""

状況(チーム向けの5分の説明)、作業(Summarize)、制約(1項目1文、記事の情報だけ)、 形式(箇条書き5つ)、追加の作業(説明が必要な用語の一覧)がそろっています。

あいまいな指示要約?感想?背景?どれを求めているか、AI は推測するしかないTell me about this article.5つの部品で埋める具体的な指示直ること状況深さが合う作業・形式何を・どの形制約長さが決まる制約推測を防ぐ追加の作業用語も拾うI’m preparing a five-minute briefing for my team,who are not experts in this field.Summarize the article below in five bullet points.Each bullet point should be one sentence.Only use information from the article.Do not add your own opinions.At the end, list any technical termsthat I should explain to my team.Article: """ [paste the article here] """
図 3例1の書き直しを並べた図。あいまいな指示では何を求めているかを AI が推測するしかないが、具体的な指示では、部品ごとに空白が1つずつ埋まっている。右端は、その部品を足したことで直ること。

例2:メールの下書き

あいまいな指示:

Write an email to a client.

具体的な指示:

Draft a polite email to a client.
Context: We need to move our meeting from Tuesday to Thursday because of a scheduling conflict on our side.
- Apologize briefly.
- Suggest two time slots on Thursday: 10 a.m. or 3 p.m.
- Keep it under 120 words.
- Use a professional but warm tone.

誰に・なぜ・何を伝えるかが指示に入っていれば、AI が推測で埋める部分が減ります。

一度で決めない:追加の指示で詰める

AI とのやりとりは、1回の指示で完成させるものではありません。 最初の結果を見て、足りないところを追加の指示で直していくほうが、結果として速く目的に届きます。

Make it shorter.                                  もっと短く
Keep the structure, but make the tone more casual.  構成はそのままで、もっとくだけた調子に
Rewrite only the second paragraph.                2段落目だけ書き直して
Give me three different versions.                 違う案を3つ出して
Why did you choose this word?                     なぜこの単語を選んだの?
What assumptions did you make?                    どんな前提を置いた?
Before you answer, ask me up to three questions if anything is unclear.
                                                  答える前に、不明な点があれば3つまで質問して

Keep the structure, but...(構成はそのままで)のように、変えない部分を明示するのがコツです。 何も言わないと、AI は直してほしくない部分まで書き換えることがあります。

最後の Before you answer, ask me... は、自分でも何を伝えればよいか分からないときに役立ちます。 AI に質問させることで、足りない部品が見えてきます。

① 最初の指示5つの部品で組む② AI の出力まず全体を読む③ 確かめる期待とのずれ・誤りずれがある④ 追加の指示直す所と残す所を言うくり返すMake it shorter.Rewrite only the second paragraph.Give me three different versions.期待どおり完成
図 4指示は1回で完成させず、出力を確かめて追加の指示を送る輪を回す。追加の指示は「直す所」と「変えない所」を短く言えば足りる。

章末問題

問 1基本作業の動詞を選ぶ

次の(1)〜(4)の作業を AI に頼むとき、指示の先頭に置く動詞として最も適切なものを、 Summarize、Compare、Extract、Rewrite から1つずつ選べ。

(1) 長い報告書の要点を3行にしてほしい (2) A 社と B 社の見積もりの違いを知りたい (3) 会議の案内メールから、日時と場所だけを取り出したい (4) 硬すぎる文章を、柔らかい調子に直してほしい

解答を見る

答: (1) Summarize、(2) Compare、(3) Extract、(4) Rewrite

作業動詞指示の例
(1) 要点を短くSummarizeSummarize this report in three lines.
(2) 違いを見るCompareCompare the two quotes from Company A and Company B.
(3) 一部を取り出すExtractExtract the date, time, and location from this email.
(4) 調子を変えるRewriteRewrite this text in a softer, friendlier tone.

(1) と (3) は、どちらも「元の文章より短くなる」点では似ています。 違いは、Summarize が全体の内容を圧縮するのに対し、 Extract は指定した情報だけを、元の形のまま取り出すことです。 日時や金額のように「言い換えられては困る情報」には Extract を使います。

問 2標準あいまいな指示を書き直す

次のあいまいな指示を、本章の5つの部品のうち少なくとも4つを使って、英語の具体的な指示に書き直せ。 状況は自由に設定してよい。

Tell me how to study English.
解答を見る

解答例:

I'm a Japanese office worker in my 40s. I studied English in school, but I can't speak it.
I have about 20 minutes a day, mostly on the train.
Suggest a four-week study plan to help me hold a simple conversation at work.
- Focus on speaking and listening, not grammar tests.
- Only suggest methods I can do alone with a smartphone.
- If you recommend an app or a book, describe what kind it is instead of naming a specific product.
Format the plan as a table with columns: Week, Goal, Daily activity.
Answer in Japanese.

使った部品:

  • 役割・状況: 40代の会社員、学校英語は学んだが話せない、1日20分・主に電車の中
  • 作業: Suggest a four-week study plan(動詞 Suggest で「案を出す」と指定)
  • 制約: 話す・聞くに集中、スマートフォン1台で1人でできる方法だけ、特定の製品名を挙げない
  • 出力形式: 週・目標・毎日の活動の3列の表、日本語で回答

確認するポイント:

  • 作業の部品が命令形の動詞で始まっているか(Tell me より、作業の中身を表す Suggest や Create のほうが結果がぶれにくい)
  • 「誰が、どんな条件で」が書かれているか。元の指示では、AI は一般論を返すしかない
  • 形式が決まっていて、結果をそのまま使えるか

状況は人によって違うので、正解は1つではありません。 AI が推測で埋めていた部分を、自分の情報で置き換えられているかを確かめてください。

問 3発展指示の問題点を見抜く

ある人が、顧客からの苦情メールへの対応を AI に手伝ってもらうため、次の指示を書いた。 この指示には、少なくとも2つの問題がある。問題点を指摘し、改善した指示を書け。

Summarize this complaint and tell me what our company's refund policy says about it.

From: Taro Yamada (taro.yamada@example.com, 090-XXXX-XXXX)
"I bought your product last week, and it broke after two days. I want a full refund."
解答を見る

問題点1: 顧客の個人情報をそのまま入力している。

氏名・メールアドレス・電話番号は、要約の作業には不要です。 他人の個人情報を AI に入力するのは避け、必要なら置き換えます。

問題点2: AI が知らない情報(自社の返金規定)を答えさせようとしている。

AI はこの会社の返金規定を知りません。それでも答えを求められると、 一般的な返金規定をもっともらしく作り上げてしまうおそれがあります。 規定について聞きたいなら、規定の本文を自分で貼り付け、その範囲だけで答えるよう指示します。

改善した指示の例:

I work in customer support. Help me prepare a reply to a customer complaint.

1. Summarize the complaint in one sentence.
2. Based only on the refund policy below, tell me whether the customer is eligible for a full refund.
   If the policy does not clearly cover this case, say so instead of guessing.
3. Draft a short, polite reply to the customer. Use [Customer] instead of a name.

Complaint:
"""
I bought your product last week, and it broke after two days. I want a full refund.
"""

Refund policy:
"""
[paste the relevant part of the company's refund policy here]
"""

確認するポイント:

  • 個人情報を取り除き、[Customer] のような置き換えを使っているか
  • AI が知らない情報は自分で渡し、Based only on...(〜だけに基づいて)で範囲を限っているか
  • 規定に書かれていない場合に say so instead of guessing で推測を止めているか
  • 作業を番号つきで分け、それぞれを動詞(Summarize、tell me whether、Draft)で始めているか

さらに、AI が作った返信は、送る前に必ず人が読んで確認します。 返金の可否のような判断は、最終的には自社の担当者が規定に照らして行うべきものです。

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