語順のまま読む:英語を頭から処理する
英文を日本語の語順に並べ替えて読む「返り読み」をやめ、意味のかたまり(チャンク)ごとに左から右へ理解する読み方を身につける。関係詞・前置詞句・to不定詞も、前から順に処理できる。
この章の到達目標
- 返り読みが遅くなる理由を、語順の違いから説明できる
- 英文を意味のかたまり(チャンク)に区切り、英語の語順のまま意味をとれる
- 関係詞・前置詞句・to不定詞を、戻らずに前から処理できる
- チャンク音読と読み直しを組み合わせた練習を、自分で回せる
目次
学校で英語を習った人の多くは、英文を読むとき、いったん最後まで目を通し、 日本語として自然な順に並べ替えてから意味をとります。これを返り読みと呼びます。
返り読みは試験の和訳には役立ちましたが、英語を「使う」段階では大きな足かせになります。 この章では、英語を書かれた順・話された順のまま理解する方法を、理由から組み立てます。 ここで身につける「英語の語順の感覚」は、次の章で扱う「話すこと」の土台にもなります。
なぜ返り読みは遅いのか
次の文を読んでみてください。
The book that I bought yesterday is on the table.
日本語に直すと「私が昨日買った本はテーブルの上にある」です。 この和訳を作るには、目が次のように動きます。
The bookを読み、いったん保留するthat I bought yesterdayを読み、「私が昨日買った」を作ってThe bookの前に置くis on the tableを読み、on the tableを先に「テーブルの上に」とし、最後にisの「ある」を付ける
英語と日本語では、情報の並ぶ順番がほぼ逆です。 日本語は「誰が」のあとに細かい情報を積み重ね、最後に動詞(どうする)が来ます。 英語は「誰が・どうする」を最初に言い、細かい情報を右へ足していきます。
そのため英語を日本語の順に並べ替えるには、文の後ろまで読んでから前に戻る必要があります。 返り読みが遅いのは、読む人の能力の問題ではなく、この並べ替え作業そのものに時間がかかるからです。
英語は「誰が・どうする」を先に言う
英語の文は、ほとんどの場合、次の流れで情報が並びます。
これを使うと、英文を左から読みながら、そのつど意味を確定させることができます。
「私は会った、友達に、駅で、昨日」は日本語としては不自然ですが、意味はすべて伝わっています。 英語を理解するために必要なのは、きれいな和訳ではなく、この「英語の順の意味のメモ」です。
チャンクで区切って読む
文を意味のかたまり(チャンク)に区切り、かたまりごとに意味を確定させながら読む方法を
スラッシュリーディングと呼びます。慣れるまでは実際に / を書き込みます。
どこで区切るか
区切る位置は、次の目印で決まります。すべてを覚える必要はありません。 「新しい追加情報が始まるところ」で切る、という原則から導けます。
| 目印 | 例 | 何が始まるか |
|---|---|---|
| 長い主語の終わり | The woman who lives next door / | 骨組みの「どうする」 |
| 前置詞(at, in, on, with, for など)の前 | / at the station | 場所・時・相手などの詳細 |
to + 動詞 の前 | / to study English | 目的・内容 |
| 接続詞(because, when, if など)の前 | / because it was raining | 理由・条件などの別の文 |
| 関係詞(who, which, that など)の前 | / who lives next door | 直前の名詞の説明 |
| カンマ | After lunch, / | 区切りそのもの |
区切りは細かすぎても粗すぎても読みにくくなります。 最初は細かめに切り、慣れたら「一度に意味をとれる長さ」まで広げてください。
例1:短い文
I met / my friend / at the station / yesterday.
| チャンク | 英語の順のメモ |
|---|---|
| I met | 私は会った |
| my friend | 友達に |
| at the station | 駅で |
| yesterday | 昨日 |
図2の文です。骨組み(I met)のあとは、すべて追加情報です。
例2:to不定詞を含む文
She decided / to study English / every morning / before work.
| チャンク | 英語の順のメモ |
|---|---|
| She decided | 彼女は決めた |
| to study English | (何を?)英語を勉強することを |
| every morning | 毎朝 |
| before work | 仕事の前に |
decided で「何を決めたのか」という疑問が生まれ、to study English がそれに答えます。
英語は疑問を作ってから、すぐ答える形で進むので、前から読むほうがむしろ自然です。
例3:関係詞を含む文
The woman / who lives next door / teaches English / at a high school / in Osaka.
| チャンク | 英語の順のメモ |
|---|---|
| The woman | その女性は |
| who lives next door | (どんな女性かというと)隣に住んでいる |
| teaches English | 英語を教えている |
| at a high school | 高校で |
| in Osaka | 大阪の |
返り読みでは「隣に住んでいる女性は…」と who 以下を先に訳しますが、
前から読むなら「その女性は、隣に住んでいるんだけど、英語を教えている」で十分です。
例4:長い文
Many people / who studied English / at school / find it hard / to speak /
because they try / to build a perfect sentence / in Japanese / before they say anything.
| チャンク | 英語の順のメモ |
|---|---|
| Many people | 多くの人は |
| who studied English | (どんな人かというと)英語を勉強した |
| at school | 学校で |
| find it hard | 難しいと感じる(何が?) |
| to speak | 話すことが |
| because they try | なぜなら、彼らはしようとするから |
| to build a perfect sentence | 完璧な文を組み立てることを |
| in Japanese | 日本語で |
| before they say anything | 何かを言う前に |
これを返り読みで訳すと「学校で英語を勉強した多くの人は、何かを言う前に日本語で完璧な文を 組み立てようとするので、話すことを難しいと感じる」となり、目は文の中を何度も往復します。
前から読めば、一度も戻りません。
find it hard の it は「難しいと感じる何か」の仮の置き場所で、中身(to speak)は後ろから来ます。
ここでも英語は「まず骨組み、中身はあと」という原則どおりに動いています。
前から処理するための3つの見方
返り読みをしたくなる箇所は、ほぼ決まっています。関係詞・前置詞句・to不定詞の3つです。 それぞれ「前から読むとどう見えるか」を押さえれば、戻る理由がなくなります。
関係詞:名詞に「どんな?」の説明を後づけする
who、which、that などの関係詞は、「直前の名詞について、今から説明を足します」という合図です。
日本語のように説明を名詞の前に置くのではなく、名詞を先に出して、説明を後ろから足します。
the man / who called you その男性、(どんな人かというと)あなたに電話してきた
the book / I bought yesterday その本、(どんな本かというと)私が昨日買った
2つ目のように関係詞が省略されることもあります。
その場合は「名詞のすぐ後ろに主語+動詞が続く」ことが目印になります。
the book I bought のように名詞が2つ並んだら、「後ろが前の名詞を説明している」と読めます。
前置詞句:「どこで・何で・誰と」を右に足す
at、in、on、with、for、from などで始まるかたまりは、ほぼ常に追加情報です。
前置詞が見えたら「ここから詳細が1つ足される」と考え、チャンクとしてそのまま受け取ります。
a cup of coffee / with milk / from the cafe / near my office
コーヒー1杯、ミルク入りの、カフェで買った、会社の近くの
日本語なら「会社の近くのカフェのミルク入りのコーヒー」と後ろから組み立てますが、 英語の順のままでも、何を指しているかは十分に分かります。
to不定詞:「→ その先の行為」を指す
to は元々「〜へ向かって」という方向を表します。to + 動詞も、この感覚で読めます。
I went to the store / to buy milk. 店に行った → 牛乳を買うために
She wants / to learn Spanish. 彼女は望んでいる → スペイン語を学ぶことを
It is important / to sleep well. それは大事だ → よく眠ることは
どの場合も「前の部分が指し示す、その先の行為」として前から読めます。 「〜するために」「〜すること」と訳し分ける作業は、意味をとるだけなら不要です。
練習の手順
語順のまま読む力は、説明を理解しただけでは身につきません。次の手順を短い文章で繰り返します。
- 素材を選ぶ。 100〜200語程度で、知らない単語が少ない(目安として1文に1つ以下の)文章を選ぶ。難しすぎる素材では語順の練習にならない
- スラッシュを入れる。 前の節の目印で区切る
- チャンクごとに英語の順のメモを書く。 日本語として自然でなくてよい
- チャンクごとに区切って音読する。 1チャンクを読むたびに、その意味を頭で確定させてから次へ進む
- メモを見ずに、スラッシュも無視して読み直す。 戻らずに最後まで読めるかを確かめる
- 数日後に同じ文章をもう一度読む。 初見の文章より、同じ文章を繰り返すほうが処理の型が早く定着する
素材は、AI に自分のレベルに合わせて作らせることもできます。 その方法は「AIを英語の練習相手と添削者にする」の章(関連章に挙げています)で扱います。
章末問題
問 1基本チャンクで区切る
次の文にスラッシュを入れてチャンクに区切り、チャンクごとに英語の順のメモを書け。
I usually drink a cup of coffee at a cafe near my office before work.解答を見る
区切り方の例:
I usually drink / a cup of coffee / at a cafe / near my office / before work.
| チャンク | 英語の順のメモ |
|---|---|
| I usually drink | 私はふだん飲む |
| a cup of coffee | コーヒーを1杯 |
| at a cafe | カフェで |
| near my office | 会社の近くの |
| before work | 仕事の前に |
骨組みは I usually drink(私はふだん飲む)です。
残りはすべて追加情報で、前置詞 at、near、before の前が区切りの目印になっています。
区切る位置は1通りではありません。at a cafe near my office を1チャンクにしても、
一度に意味をとれるなら問題ありません。
問 2標準関係詞を前から読む
次の文をチャンクに区切って英語の順に意味をとれ。また、この文の骨組み(主語と、それに対応する動詞)を答えよ。
The man who called you this morning wants to know when you can visit his office.解答を見る
区切り方と英語の順のメモ:
The man / who called you / this morning / wants to know / when you can visit / his office.
| チャンク | 英語の順のメモ |
|---|---|
| The man | その男性は |
| who called you | (どんな人かというと)あなたに電話してきた |
| this morning | 今朝 |
| wants to know | 知りたがっている(何を?) |
| when you can visit | いつあなたが訪ねられるかを |
| his office | 彼の事務所を |
骨組み: 主語 The man、動詞 wants。
who で「その男性の説明」が始まり、this morning までがその説明です。
説明が終わったあとに現れる wants は、3人称単数の -s がついていて、
主語 The man と形が合います。これが文全体の動詞です。
called を文の動詞だと思い込むと「その男性が今朝あなたに電話した」で文が終わった気になり、
wants が浮いてしまいます。関係詞の説明が終わったところで、骨組みの続きが再開すると
考えれば迷いません。
問 3発展長い主語と that の見分け
次の文について、問いに答えよ。
The idea that you have to understand every word before you move on is one of the main reasons why many learners read so slowly.(1) チャンクに区切って英語の順に意味をとれ。
(2) この文の動詞はどれか。見つけにくい理由とともに答えよ。
(3) ここでの that は関係詞か、それとも The idea の中身を述べるものか。根拠とともに答えよ。
解答を見る
(1)
The idea / that you have to understand every word / before you move on /
is one of the main reasons / why many learners read / so slowly.
| チャンク | 英語の順のメモ |
|---|---|
| The idea | その考え |
| that you have to understand every word | (中身は)すべての単語を理解しなければならない、という |
| before you move on | 先に進む前に |
| is one of the main reasons | は、主な理由の1つだ |
| why many learners read | (何の理由かというと)多くの学習者が読むのが |
| so slowly | とても遅い |
(2) 動詞は is。
主語 The idea のあとに、that から move on まで長い説明が挟まっているため、
文の骨組みが遠く離れています。途中に have to understand や move on という動詞が現れるので、
それを文の動詞と取り違えやすいのです。
that 以下の説明が終わった直後の is が、主語 The idea(単数)に対応する動詞です。
前から読むときは「長い主語が来たら、その説明が終わるまで骨組みの続き(動詞)を待つ」と
意識しておきます。
(3) The idea の中身を述べる that(関係詞ではない)。
that の後ろの you have to understand every word before you move on は、
主語も目的語もそろった欠けのない文です。関係詞なら、後ろのどこかに欠け
(the idea that he suggested の目的語のような)があるはずです。
欠けがないので、この that 以下は「その考え」の中身、
つまり「すべての単語を理解しないと先に進めない、という考え」を述べています。
ちなみにこの文の内容は、本章の「全部訳さないと理解していない」という誤解そのものです。