話すための型:結論・理由・例
話せない原因は単語不足より「日本語の完成文を訳そうとする」ことにある。短い主語+動詞で始めて情報を足す話し方と、結論・理由・例の順で組み立てる型、言葉に詰まったときの言い換えと時間の稼ぎ方を身につける。
この章の到達目標
- 日本語の完成文を訳そうとすると話せなくなる理由を、語順の違いから説明できる
- 短い主語+動詞で話し始め、情報をあとから足して文を伸ばせる
- 結論・理由・例・結論(PREP)の順で、30秒〜1分の答えを組み立てられる
- 知らない単語を、分類・用途・似たものを使って言い換えられる
- つなぎ言葉と聞き返しの表現で、考える時間を確保できる
目次
「読めば分かるのに、話そうとすると口が止まる」。 学校で英語を学んだ人の多くが、この状態にあります。
原因は、単語や文法の知識が足りないことよりも、話すときの手順にあることがほとんどです。 この章では、話すための手順を「型」として組み立てます。 型は暗記する例文集ではありません。何をどの順で言えばよいかを決める枠組みで、 中身を入れ替えればどんな話題にも使えます。
前の章で見た「英語は骨組みが先、詳細があと」という語順の感覚が、ここでも土台になります。
なぜ話せないのか
話そうとして口が止まるとき、頭の中では次のことが起きています。
- 言いたいことを、まず日本語の完成した文として組み立てる
- その日本語の文を、英語にまるごと翻訳しようとする
- 翻訳の途中で分からない単語や構文にぶつかり、止まる
たとえば「昨日、駅前に新しくできたカフェに友達と行ったんだけど、思ったより混んでいた」と 言いたいとします。この文をまるごと英語にしようとすると、 「新しくできた」「駅前の」「〜んだけど」をどう組み合わせるかを一度に解かなければなりません。
日本語は、詳細を先に積み重ねて、最後に動詞が来る言語です。 一方、英語は「誰が・どうする」を最初に言う言語です。 日本語の完成文を英語にするには、文全体を頭に置いたまま並べ替える必要があり、 会話の速さ(相手は1〜2秒の間しか待ちません)では、まず間に合いません。
短い主語+動詞で始めて、あとから足す
先ほどの文を、英語の語順に合わせて短い文に分けて言ってみます。
I went to a new cafe yesterday.
It's near the station.
I went with a friend.
It was more crowded than I expected.
1文ずつ見ると、どれも中学英語の範囲です。 難しかったのは英語ではなく、日本語の長い1文を一度に訳そうとしたことだったと分かります。
慣れてきたら、短い文を and や but でつないで1文にしてもかまいません。
I went to a new cafe near the station yesterday with a friend, but it was more crowded than I expected.
これは前の章で見た「骨組み → 詳細を右へ」の流れそのものです。 読むときに前から処理できるようになると、話すときにも同じ順で文を出せるようになります。
主語を探す
日本語の「〜は」は、英語の主語とは限りません。
「このお店はカードが使える」をそのまま This shop is... と始めると詰まります。
こういうときは「実際に何かをするのは誰(何)か」を考えて、それを主語にします。
このお店はカードが使える → You can use a card here.
This shop takes cards.
明日は雨らしい → It's going to rain tomorrow.
I heard it's going to rain tomorrow.
主語と動詞が決まれば、残りは足していくだけです。
結論から言う:PREP の型
意見や説明を求められたときは、次の4段階で組み立てます。 それぞれの頭文字をとって PREP と呼ばれます。
| 段階 | 中身 | 使う型の例 |
|---|---|---|
| Point(結論) | 一言で答える | I think... / Yes, I... |
| Reason(理由) | なぜそう言えるか | The main reason is that... |
| Example(例) | 具体的な場面・経験 | For example,... |
| Point(結論) | もう一度まとめる | So overall,... |
Do you like working from home?(在宅勤務は好きですか)と聞かれた場合の例です。
P: Yes, I like working from home.
R: The main reason is that I don't have to commute. It saves me about two hours a day.
E: For example, I can use that time to cook dinner or study English.
P: So overall, working from home works well for me.
最初はすべての段階をそろえなくてもかまいません。 P と R の2つだけでも、会話では十分に答えとして成立します。
使い回せる文の型
次の表は、話題を問わず使える型です。 一度に全部を使おうとせず、まず自分がよく使いそうなものを3〜4個選んで、口に慣らしてください。
自分の考えを組み立てる
| 型 | 使う場面・注意 |
|---|---|
I think (that)... | 意見の切り出し。最も使いやすい。that は省略してよい |
In my opinion,... | 意見をはっきり示す。やや改まった響き |
The main reason is (that)... | 理由を1つに絞って言う。PREP の R |
For example,... | 具体例を出す。PREP の E |
What I mean is... | 言い直し・補足。うまく伝わらなかったと感じたときに |
In other words,... | 別の言葉で言い換える |
So overall,... | まとめ。PREP の最後の P |
I'm not sure, but... | 自信がないが、何か答えたいとき。黙るより良い |
I see your point, but... | 相手の意見を受け止めてから反対する |
聞き返す・時間を稼ぐ
| 型 | 使う場面・注意 |
|---|---|
Could you say that again? | 聞き取れなかったとき。What? だけだとぶっきらぼうに聞こえることがある |
Could you speak a little more slowly? | 速すぎるとき。遠慮せず使ってよい |
Do you mean...? | 理解が合っているかの確認。自分の言葉で言い直して確かめる |
Let me think for a second. | 考える時間がほしいとき。沈黙の理由を相手に伝えられる |
That's a good question. | 答えに時間がかかりそうなとき。前置きとして自然 |
How do you say [日本語の単語] in English? | 単語が分からないとき。相手に聞いてしまう |
単語が出てこないときの言い換え
話している途中で単語が出てこないのは、母語話者にもよくあることです。 そのとき必要なのは、単語を思い出すことではなく、別の言葉で説明し直すことです。
言い換えにも型があります。
It's a thing you use to [用途]. 〜するのに使うものです
It's a kind of [大きな分類]. 〜の一種です
It's kind of like [似たもの], but [違い]. 〜みたいなものですが、〜が違います
It's the opposite of [反対のもの]. 〜の反対です
It's a person who [何をする人か]. 〜する人です
It's a place where [そこで何をするか]. 〜する場所です
It's when [状況]. 〜のときのことです
例を見てみます。
炊飯器 → It's a machine you use to cook rice.
確定申告 → It's the paperwork you do every year to report your income for taxes.
幼なじみ → She's someone I've known since we were little kids.
猫舌 → I can't eat or drink very hot things. My tongue is sensitive to heat.
a thing you use to... や a person who... は、前の章で読んだ関係詞で名詞に説明を後づけする形です。
読むときに前から処理できるようになった形が、そのまま言い換えの道具になります。
つなぎ言葉と時間の稼ぎ方
考える間の沈黙が長すぎると、相手は「伝わっていないのかな」と不安になります。 短いつなぎ言葉で「今考えています」と示せば、数秒の間は自然に保てます。
Well,... ええと(話し始め・考えながら)
Let me see... ええと、そうですね
Um... / Uh... えー(短い間を埋める)
How should I put it? なんて言えばいいかな
Actually,... 実は(補足や訂正を始める)
I mean,... というか(言い直し)
もう1つの手は、質問をそのまま繰り返すことです。
Q: What do you usually do on weekends?
A: What do I usually do on weekends? Hmm, well, I usually go for a walk in the morning.
繰り返している間に、答えの骨組み(I usually...)を用意できます。
練習の手順
型は、口に出して使ってはじめて身につきます。1人でもできる練習を示します。
- 質問を1つ決める。
What do you do on weekends?Why are you learning English?など - 10秒だけ考える。 結論(P)と理由(R)だけを決める。日本語で完成文を作らない
- 30秒〜1分、PREP で話す。 スマートフォンなどで録音する
- 録音を聞き返す。 詰まった箇所・言えなかった単語を書き出す
- 言えなかった部分を調べ、もう一度同じ質問に答える。 2回目は明らかに楽になる
相手がいたほうが練習の幅は広がります。 AI を会話の練習相手にする方法は、関連章の「AIを英語の練習相手と添削者にする」で扱います。
章末問題
問 1基本短い文に分けて話す
次の日本語の内容を、短い主語+動詞の文を3〜4つ並べて英語で言え。 日本語の1文をまるごと訳す必要はない。
「週末はたいてい近所の公園で子どもとサッカーをしているので、月曜日はいつも少し疲れています。」
解答を見る
解答例:
I usually play soccer on weekends.
I play with my kids in a park near my house.
So I'm always a little tired on Mondays.さらに細かく分けてもかまいません。
I usually play soccer on weekends.
I play with my kids.
We go to a park near our house.
So I'm always a little tired on Mondays.確認するポイント:
- どの文も「誰が・どうする」(
I play、We go、I'm)から始まっているか - 「近所の公園で」「子どもと」を、動詞のあとに
in a park、with my kidsとして足しているか - 日本語の「〜ので」を、文を切ったうえで
Soでつないでいるか
日本語の文は「週末は」から始まりますが、英語では I が主語です。
「実際にサッカーをするのは誰か」を考えると、主語が決まります。
問 2標準PREP で答える
次の質問に、PREP の型(結論・理由・例・結論)で答えよ。長さは4〜6文程度とする。
What do you do to stay healthy?解答を見る
解答例:
P: I try to walk every day.
R: The main reason is that it's easy to keep doing. I don't need any special equipment or a gym.
E: For example, I get off the train one stop early and walk the rest of the way to work. It takes about twenty minutes.
P: So overall, walking is the simplest way for me to stay healthy.確認するポイント:
- 最初の1文で答えが出ているか。 「健康のために何をしているか」への答え(
I try to walk every day.)が冒頭にある - 理由が1つに絞られているか。 理由を3つも4つも並べると、それぞれが浅くなり、話す側も迷う
- 例が具体的か。 「いつ・どこで・どのくらい」が入ると、聞き手が場面を思い浮かべられる
- 最後にもう一度結論に戻っているか。 同じ言葉の繰り返しでなく、
So overall,...で言い方を変えるとまとまりが出る
内容は何でもかまいません。「正しい答え」があるのではなく、型に沿って話が進んでいるかを確かめる問題です。
問 3発展言い換え
次の3つの語の英単語が思い出せないとする。本章の言い換えの型を使って、それぞれを英語で説明せよ。
(1) 栓抜き (2) 定年退職 (3) 花粉症
解答を見る
(1) 栓抜きの解答例:
It's a small tool you use to open a bottle, like a beer bottle with a metal cap.「分類(small tool)→ 用途(open a bottle)→ 具体例(beer bottle with a metal cap)」の順です。
英語では bottle opener と言います。
(2) 定年退職の解答例:
It's when you stop working because you reach a certain age, like 60 or 65.
The company decides the age.制度や出来事は It's when...(〜のときのこと)で説明しやすくなります。
英語では retirement や、年齢を強調して mandatory retirement などと言います。
(3) 花粉症の解答例:
It's kind of like a cold, but it's caused by pollen in the spring.
Your eyes get itchy and you sneeze a lot.「似たもの(a cold)+違い(caused by pollen)」の型に、症状を足しています。
英語では hay fever や pollen allergy と言います。
確認するポイント:
- 大きな分類や似たものから入っているか。聞き手が「だいたい何の話か」をすぐにつかめる
- 用途・原因・状況のうち、その語を特定するのに必要な情報を1つ以上足しているか
- 1文に詰め込まず、短い文を2つに分けてもよい
言い換えたあとに What do you call that in English? と聞けば、
相手が正しい単語を教えてくれます。言い換えは、単語を覚える機会にもなります。